阿倍王子神社
2015-05-17



歩いている
大勢の人と一緒に
俺は歩いている
畑と藪の道を
帝も通ったというこの道を
ひたすら
約束の地を目指して

天王寺を過ぎて人家などないというのに
この賑わいはなんだろう
女子供までが
挙ってこの道を行く
もうすぐ
第二王子で休むとしようか

中世以降
熊野参詣は蟻の熊野詣と言われるほど
一大ブームを巻き起こした
当時の人々は
最南極に位置する熊野を
浄土に面する地
浄土に最も近い地
と信じていた

誰もがその地を踏みたがる
南へ向かうこの道はいつしか
熊野街道と呼ばれるようになる

街道の起点は大阪の渡辺津
今の大阪城のある辺り
つまり
古代に生國魂の神を祀った祭祀場である
そこから四天王寺と住吉大社が結ばれ
まさに聖地ネットワークが
上町台地上に形成される
さらにその街道沿いには
九十九王子と呼ばれる
熊野権現を祀る神社などが設置され
休憩所や宿泊施設として機能したそうだ

そしてここ阿倍王子神社は
九十九王子の一つであり
大阪府内に唯一現存する王子である
四天王寺と住吉大社の中間に位置する

ここから紀伊山地の霊場へとつながっている
大阪と和歌山を連ねる一帯がまるで
大規模なアミューズメントパークのように見える
だけど便利な世の中になった筈なのに
現代の私達には
日数を要する熊野詣などほとんど不可能な話で
一体何が進歩したのか
中世の人にうまく説明できやしない

神社の西側がおそらく当時の熊野街道
そこから四天王寺のある方角には
あべのハルカスが見える
熊野の果ての浄土を見失った現代の私達は
それでもまだどこか高みへと
約束の地を探しているのかもしれない

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阿倍王子神社
大阪府大阪市阿倍野区阿倍野元町9-4

[誉田別命]
[素戔嗚尊]
[伊邪那美命]
[伊邪那岐命]
[大阪]

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