胡録神社
2014-11-27



整然としたマンション群
規格された街路
どこか高い所で
母親が布団を叩く音
呆然と
いつまでも横断歩道を渡れない
手押し車の老婆

大規模な再開発によって
生まれ変わった街
区画割から全て真っ更に
過去の名残をほぼ完全に消し去った街

この無機的な空間を打ち破るように
忽然と
神社が現れる
木造の社には
またもやあの第六天が鎮座する

戦に敗れ流れ着いた武士団
彼らはこの地を開墾し
ここを永住の地とした
江戸切り絵図では
この地が田んぼであったことを確認できる

明治以降だろうか
徐々に民家が増え始め
昭和の航空写真では
密集した民家が町を形成しているのを確認できる

空襲を逃れたこの町は
戦後も長くその雰囲気を保ち続け
ノスタルジックな町全体を文化財さながらに
メディアが取り上げたこともあったという

江戸の端っこ
川のカーブの末端
逃げてきた者にとっては相応しい地であったろうか
恐らくは
他社の侵入を排し
為政者の支配を拒み
独自のルールの下
彼らは生活を続けた
時に
外界で生きられない者が境を超える
第六天がそんな人々を受け入れる

閉ざされた世界とその境界は
行政と巨大資本の結託でほぼ完全に破壊された
密集した木造建築は次々に解体撤去され
一時は茫漠たる草地が広がっていたという
住民は懐かしい住み慣れた家から
等価交換によるマンション住まいを選択した
町の境界は消え去り
人々はハコの中の閉空間を目指す

第六天が結びつけるコミュニティが
今も有効なのかは私は知らないが
少なくともこの立派な木造の社は
土地の記憶を亡霊のように蘇らせ
どこまでも自閉していく時代に抗う

胡録という名前は
尤もらしく色々言われているが
ダイロクテンの大が駄目なら小にするさ
ってくらいな話なんじゃないかな
胡という字には
「でたらめ」「いいかげん」という意味もあるらしい
あなたたちが禁じるダイロクテンではない
でたらめなロクテンなのさと
なんとも人を食ったネーミングではないか
権力者の力には
こうやって抗うべきだ

禺画像]

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胡録神社
東京都荒川区南千住8-5-6

[荒川区]
[第六天]

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