善き事も一言
悪しき事も一言
只一言宣えば叶う神
一言主である
目の前に現れた神のその言葉に
雄略天皇は恐れ入り
太刀や弓矢
家来らの衣服を次々剥ぎ取り
一言主神へ献上した
雄略天皇が葛城岳で
自分達と瓜二つな一団に出喰わす場面
記紀に唐突に挿入されるこの件は
大和朝廷が統一王朝となる以前の
王権に匹敵する勢力を持った
集団の存在を暗示している
その頃は本当に
言葉が力を持ち
口から発せられた言葉は
そのまま現実となった
言葉を自在に操る者に
未熟な時代の倭の王は
驚いたのかもしれない
在地豪族の葛城氏
何代にもわたって
一族から天皇の妃を輩出し
有力者として君臨していた
雄略天皇はサイコパスかと思えるほどの
残忍な悪行を繰り返す男であったらしい
葛城氏はこの暴君に
ほとんど滅ぼされてしまったという
記紀の挿話はそんな葛城氏への
鎮魂の物語なのかもしれない
葛城岳の山頂は禁足地として
現在でも足を踏み入れる事ができない
その前に鎮座する
一言主神を祀る神社
無残に滅ぼされた魂を
頑なに守り続けているようだ
一言主神の適確な言葉は
もう聞こえない
世界の至る所で
矛盾と悲惨が生じてる
一言で言い放つあの神は
こんな時代を
どんな言葉で
語るだろう
反知性主義が勝利する
垂れ流される醜い言葉
戦争が露出する
その他大多数は
自分の頭で考える事を止め
犬のように尻尾を振り続けてる
何一つ伝わらない
薄っぺらな言葉の群れ
あなたの胸を鋭く突き刺す
必殺の言葉があったらいいのにな
葛木神社
奈良県御所市高天476
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