柴又八幡神社
2019-07-07



男は言う
ここにいる訳にはいかないよ
あのタクシーの運転手のところに
今夜は泊めてもらうさ

女は言う
つまらないわ

男は立ち去ろうとするが
開けた襖の先は押入れだった
含羞む男
そして静かにそこを後にした

葛飾柴又といえば帝釈天と
昭和世代の私達には
すっかり馴染みのあるところ
いつでも参道は大賑わいで
映画の通りの雰囲気を
今でも充分感じることができる

京成柴又駅前には寅さんとさくらの銅像と
今ではもう珍しくなってしまった灰皿が置かれてる
そういえば寅さんは煙草吸ってただろうか
当たり前のように大人はみんな煙草を吸ってた時代
僕らはそんな自由をいつしか手放した
永遠に戻らない自由な日々

煙草を吸わない人は知らないだろういつ頃からか
煙草の箱には呪いの言葉が綴られている
肺気腫云々と能書き垂れてはいるが要は
あんた死ぬで
あんた死ぬでと綴られている

帝釈天と京成金町線を挟んで反対側に
柴又八幡神社がある
帝釈天に人が集まり過ぎて
この境内は人影も疎らで寂しい

八幡神は託宣の神
所謂神のお告げというやつである
その登場は古く
仏教が伝わった頃の西暦500年代くらいらしい
奈良に大仏を建てちまいなとか
道鏡を天皇にしたらあかんとか
何せよく喋る神様なのだ

神様が言っているのだからと
時の政治家は大いにそれを利用した
人々もまたその言葉を信じたのだろう
全国に数多く分布する八幡神社は
この託宣システムの
出先機関として機能していたに違いない

ここ葛飾八幡神社は
古墳の上に建っている
被葬者はわかっていないが
八幡神が後からやって来て
どかっと上に乗っかったという訳だ
そこにいた人たちは
突然現れた新しい神様の言葉を
どういう気持ちで聞いただろうか
すんなりとその言葉は受け入れられただろうか

託宣など無効となった時代
政治家の薄っぺらい言葉には
皆が辟易している
心の無い言葉が氾濫する
それは薄く薄く尖って人の心を刺す

言葉に傷つく人がいる
学校にも会社にも行けなくなるほどだ
言った人間はそこまで考えてない
呪いをかけようなんて意図はないだけに
その浅墓さは何よりも罪深い
言葉はただの音声だ
ただの空気の振動なのだ
空気の振動が
君の鼓膜を震わせてるだけさ

それを言っちゃあ
お終いよ
溜まったり貯めてる言葉もあるだろうが
その一言が人生を左右する事もあるって
俺逹は寅さんに学んだろ
そうやって
今日も涙の日が落ちる
日が落ちる

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柴又八幡神社
東京都葛飾区柴又3-30-24

[葛飾区]
[誉田別命]

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